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記事:松本 隆さん
「アメリカ留学経験者」
1) 大学附属の語学学校
私が通ったのは、テネシーにある州立大学附属の語学学校で、
その大学の正規の学生になる為に留学生が英語を学ぶ語学学校でした。
レベルは1から6まであり、
最初に筆記と会話のテストを受けてレベルを振り分けられました。
レベル1はABCから学ぶ人
(このレベルから始まる人は、私が通っている時は一人もいませんでした)。
レベル2は日本人の中でも英語が特に苦手だったという人。
レベル3は日本で中学・高校で英語を教科として普通に勉強していた人。
レベル4はレベル3の人よりも少し得意だった人
レベル5は日常会話はこなせるくらいの人
レベル6はレベル5を修了して大学の正規の学生が受けている授業を受けて
レポートを提出する、というものでした。
レベル6を修了すると、TOEFLを受けなくてもその大学の正規の
学生になれるシステムです。
語学学校では、
GRAMMAR(文法)、READING(読み)、WRITING(書き)、LISTENING(聞き取り)の
4つの教科があり、教科ごとに行われる最後のテストに合格すれば、
次のTERMはひとつ上のレベルに上がりますが、
不合格だと、また同じレベルを受けなければなりません。
レベルが上がるかどうかは、教科ごとで異なるので、
例えばGRAMMARとWRITINGとREADINGは合格してレベルが
3から4に上がっても、LISTENINGは不合格で次のTERMも
またレベル3を受けるというケースもあります。
期間は1TERMが8週間で、1TERM終わると2週間ほどの休みがあり、
費用は1TERM、約1,000ドルでした。
2) 留学の費用について
学費は1TERM、1,000ドルほどでしたが、滞在は学生寮に入るかアパートを借りて一人暮らしのどちらかでした。
人口の少ない小さい町だった為、ホームステイは無かったようです。
学生寮は1ヶ月あたり約500ドルで、その他ミールプランが1日2食だと約250ドル、1日3食だと約400ドルでした。
ミールプランというのは、大学内にあるカフェテリアで食事をする為のカードで、
カフェテリアの食事が口に合わないと言う人は自分で外食したりします。
アメリカの田舎町だったので、物価もそれほど高くなく、アパートの家賃は水道代・光熱費が含まれているのが
一般的なので、約400~500ドルが平均でした。
2TERM分の学費と家賃、食費で5,000ドル(約60万)で足りるくらいです。
私は車を持っていたので、1,000ドルで購入し帰国前に600ドルで友人に売ったのですが、アメリカは日本よりも
ガソリン代が安く日本の4分の1程度の金額だったので、ガソリン代も含めても、5,000ドルで済みました。
3) 車への意識の基準
滞在していた町には路線バスが無かったので、車が必要となり、
知人を介してFORDのセダンを中古で1,000ドルで購入しました。
既に90,000マイル(約145,000キロ)以上走行していた車だったので、何度も故障に見舞われました。
エアコンは壊れていて、ヒーターを点けても運転席側はきかず、冬は足元から寒い風が入ってくる。
車検というものが存在せず、メンテナンスに入れるかどうかは個人に委ねられるので、恐らく私の車はほぼ
メンテナンスはされていなかったようでした。
私はあまり車に詳しくないのですが、それでも走り具合が調子悪いと感じるほどで、
少し長距離を走る機会があり、念のために近所のガソリンスタンドで見てもらうと、
エンジンの中に必要なラジエーターやエンジンオイルなどほとんどが空っぽと言われ、
日本ではありえない状態でした。
補充後に、二つ隣の州に行ったりしたのですが、また見てもらったところ、
エンジンの中にあるパイプのような部品が
破裂寸前と言われてすぐに交換。
つい数日前に見せた時は何も言ってなかったのに、長距離行っちゃったよ~と内心思いましたが、
何も言えないのでただ、部品交換をしてもらいました。
その後は走行中にステアリングオイルのタンクに亀裂が入ったようで、
ボン!という衝撃音と共に突然ハンドルが重くなりました。まともに曲がれないくらいに重いのです。
修理に持っていくと、「ステアリングオイルのタンクにヒビが入ってるね。
でも、あと1ヶ月くらいで帰国するなら、
俺なら直さない。何でも良いから安いステアリングオイルを補充しながら乗る」
と提案されて、経済的な面を重視して、提案通りにしました。
車に乗るたびにステアリングオイルを補充しなければならないのですが、
アメリカではボンネットを開けて何かをしている姿を見ると、必ず誰かが「大丈夫?手伝いが必要?」
と声をかけてくれます。タイヤに細かいヒビが無数に入っているような状態だったので、
もう数ヶ月で寿命だと言われつつ使い続けていたのですが、
ある時片道300キロくらい離れたショッピングモールに出かけた際に釘を踏んでしまいパンク。
困っている人がいると声をかけてくれる国民性が非常にありがたく、
見知らぬ町でもパンク修理をしてくれるお店を探すのを手伝ってくれる人がいてパンクを直して帰宅しました。
こういった車のトラブル経験により、故障が無く、パワーステアリングがあり、エアコンが使えて、ウインカーや
ライトがちゃんと点く車であれば充分だという感覚が身に付きました。
私の場合は特にオンボロな車ではありましたが、
日本国外ではこのようなトラブルはあっても普通なのかもしれません。
4) 自動販売機
アメリカにも自動販売機が色々な場所に設置されています。
日本では屋外に設置されていることが多いですが、アメリカは基本的に
大学や病院、空港、ショッピングモールの中など施設の中に設置されています。
これは治安の問題が背景にあるようです。
機械が正常に作動することは日本では当たり前のことですが、
日本の外に出るとそれが当たり前ではなくなります。
自動販売機にお金を入れても商品が出てこないことがよくあるからです。
大学の寮にあるランドリーを利用していた時に、ジュースが飲みたくて、
自動販売機にお金を入れてボタンを押しても全く動きません。
たった25セントとは言え、お金を入れて商品が手に入らないのは気分が良くないですが、
どうしようもないので諦めるしかありませんでした。
まだ留学して初期の頃だったので、誰にどのように伝えれば良いのか分からなかったわけです。
語学力の壁も関係していますが、恐らく自動販売機の問い合わせ先に連絡したところで、
お金を実際に入れたかどうか証拠も無いので、商品はもらえないと思われます。
テレビドラマや映画などで見たことがある人もいるかもしれませんが、
スナック菓子やチョコレートバーなどの自動販売機もあります。
これもお金を入れて、欲しい商品の番号を押すのですが、
もうすぐ取り出し口に落ちてくるというところで引っかかってしまい出てこない、
ということが起こり得ます。日本国外では自動販売機は使わないのが無難です。
5) 英語の訛り
英語にはイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカと話される国によって
それぞれの訛りがありますが、その国内でも地方によって更に訛りがあります。
小さな国土である日本でも各地に訛りがあるので、当然と言えば当然ですね。
私がいたテネシーは南部にあたるので、南部訛りでした。
これが非常に聞き取りにくく、私にはドナルドダックがしゃべっているような感じに聞こえたのです。
日本にいた頃には聞き取りの練習を兼ねて、映画は吹き替えではなく字幕で観ていたのですが、
やはり完璧に聞き取れるわけではないので、本場の英語の聞き取りにくさを痛感しつつも、
実は南部訛りのせいで余計に聞き取りにくかったと思われます。
先生がゆっくりめに話してくれる英語は訛りがあまり無く、大体理解できたのですが、
お店や銀行などの地元の人の話すことは何を言われているのかさっぱり理解できず、
話が進まないことがよくありました。ドーナツ屋さんでさえも、見た目で
「This one, this one, this one, please」と指をさして選べば良いのですが、
その中に、クリームを入れて完成させてお客に渡すというドーナツがあったらしく、
「What kind of cream would you like ?(どのクリームが良いですか?)」
と聞かれても、全く聞き取れず、かなり困惑。
「What kind of cream do you have ?(どんな種類のクリームがありますか?)」と
聞き返すこともできませんでした。
英語を習得した今でも、テレビで見るドナルドダックの英語は聞き取りにくいですね。
6) 人種差別・偏見
これはあってはいけないことですが、アメリカ南部は人種偏見が色濃く残る場所です。
南部では黒人が奴隷として使われていた背景があるのですが、南北戦争によって奴隷が開放された後も
人種偏見が根底に続いていたのです。
周囲を見ても、白人と黒人は一切口をきかないし、黒人は黒人のグループ、
白人は白人のグループで固まっているので、白人と黒人が一緒にいるところなど見たこともありませんでした。
黒人だけでなく日本人を含むアジア人に対しても嫌な態度を取ったり悪態を言ってくる白人もいました。
人種差別を受ける側になるということは、日本では絶対に経験することがなかったので、
最初は非常にショックでしたが、この経験は色々な立場を想像したり、
自分も無意識にそういうことをしていたのではと考えさせてくれました。
人種で差別されてしまうと、勉学やスキルを磨くなどの努力では覆すことが難しいです。
人種ではなく、人柄や能力で判断されるようになればと強く感じさせられました。
7) アメリカは医療費が超高額
留学する際には、ほとんどの人が出発前に保険に加入すると思います。
アメリカに渡ってからでは健康保険に加入することはむずかしくなるので、必ず事前に加入しましょう。
アメリカは医療費が非常に高額なので、もしも無保険の状態で病院に行かなければならない状況になると
とんでもないことになります。
普段から体調管理に気を付けていても、食中毒や急病、事故などは自分の判断では何もできず、救急車で
運ばれてしまうこともあるわけです。
まず、日本の救急車は無料ですが、アメリカは有料です。
更にタクシーのように移送した距離で計算されます。
無保険だと救急車で運ばれるだけで、日本円で約10~20万円請求され、
緊急で入院などになった場合は、数日間の入院でも数百万円単位の請求がされることもザラです。
こんなことになっては留学どころではなくなってしまいますから、
保険はケチらずに必ず加入することを強くお勧めします。
疾病や傷害の補償は無制限や1億くらいが安心です。
留学中のことではありませんが、知人がアメリカに住んでいて急病で救急車で運ばれ、
二週間ほど入院した時に、無保険だったので、100万ドル(約1億円)請求され
莫大な借金を背負ってしまったと言う話を聞いたことがあります。
アメリカの医療費は日本の感覚や常識をはるかに上回っています。
8) アメリカの田舎は外国人の英語が聞き取れない?
都会だとたくさんの国からの旅行者や滞在者、移民が多いので、
様々な外国語訛りの英語を理解してもらえますが、
田舎に行くととたんにびっくりするほど通じなくなることがあります。
ファストフード店のスタッフも、何回言っても聞き返されてしまい、
だんだんどう発音すれば良いのか分からなくなってしまいます。
小学生の頃から英語教室に通っていたのもあって、私は発音は悪くないほうだったと自覚していたのですが、
温かい紅茶を頼みたくて
「I will have a hot tea, please」
と言っていても、全く理解されず、何度言っても分からないようだったので、ちょっと強めに
「Tea, please」と言ったら通じました。
てっきり自分の発音が悪いのか、文法が間違えているのかと思ったりもしたのですが、
最近思うのは、日本人はシャイなのと英語に対する苦手意識も相まって、
英語を話す時につい声が小さくボソボソと言ってしまうことが多いようです。
また、相手が聞き返すと、自分の英語が間違えているのかと思ってどんどんボソボソと話してしまう、
悪循環に陥ってしまいがちです。
特に日本語はあまり口の筋肉を使わなくても発音できる言語なので、英語のように口を大きく開けて唇や舌をしっかり
使わなければちゃんと発音できない言語を話す時は、聞き取りにくい言い方になってしまうようです。
英語を話す時は、相手にしっかり聞こえるように大きめな声ではっきりと言うのが大切だそうで、
「何言ってるのか分からないよ」という態度を取られたら、
「Why don’t you understand my English !」
と言うくらいの強い態度でも良いのよと言われた事があり、これはさすがに苦笑してしまいましたが、このくらいの勢いも
必要なのかもしれません。
9) 治安について
日本も最近は治安が悪くなってきているように感じますが、世界的に見ると最も良いと思います。
なので、日本にいる感覚で行動を取るのは正直非常に危険です。
大都市に留学する場合は特に、夜は必要以外は出歩かないようにする、
危険なエリアを把握しておく、裏路地のようなところには昼間でも入らない、
自分はいつでも狙われているという意識を持って行動する、などがとても大切です。
私がいた町は人口12,000人のとてもとても小さな町で、
全米で4番目に治安が良いと言われていた町だったのですが
それでも夜出かける時、買い物に行く時などは、車は店にできるだけ近いところに駐車して、
まず車の中から周囲を見て、怪しそうな人が近くにいないかどうかを確認して、
小走りで店に入り、帰る時も同じように店の入り口で周囲を見てから、
小走りで車のところに行ってサッと乗り込むようにしていました。
夜お酒を飲みに行ったりしても、日本人のようについ飲みすぎてベロベロに酔っ払うなども危険です。
身包みはがされて財布も何もかも盗られてしまうことになりかねませんので、ほどほどに嗜む程度が無難でしょう。
どうにもたくさん飲みたい時は、宅飲みで。
アメリカやカナダはATMが24時間稼動しているのが一般的なので、強盗にATM まで連れて行かれて、
口座の残高を全部盗られたという話も聞いたことがあります。
強盗などには遭わないでいられるのが一番ですが、とにかく命が最も大切なので、
財布や口座のお金を盗られても、命が助かりさえすれば良いと思います。
たった5ドルの為に殺されてしまうこともあるので、盗られたくないと抵抗するのは絶対にやめましょう。
10) 州によって税率が違う
アメリカは一つの統合された国ではなく、50の州による共同体なので、州によって税率も法律も違います。
州境の近くに住んでいる場合は、ちょっと足を伸ばして価格の違いを見に行っても良いかもしれません。
アメリカで買い物をしてかかる税金は‘消費税’ではなく、‘Sales Tax(販売税)’という名前になります。
州税と地方税の合算がSales Taxになるのですが、最も高いのが9.46%のテネシー、
最も安いのが0のデラウェア、モンタナ、ニューハンプシャー、オレゴンです。
例えば、テネシーのすぐ上に隣接しているケンタッキー州は6.00%、
バージニア州は5.63%なのでちょっと安くなりますね。
8%前後のカリフォルニア州やワシントン州、ネバダ州、アイダホ州はオレゴン州に隣接しているので、
州境に近ければ買い物の金額がかなり違うと思います。
日本でも、もし都道府県によって消費税率が異なるとしたら、
県境の近くに住む人は少しでも税率の安い県で買い物をするのではないでしょうか。
私もテネシーの州境に近い町だったので、ちょくちょくケンタッキー州まで買い物に行っていました。